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まじない屋

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「夜、眠る前に一包み、朝食の前に一包み。お湯で煮だして飲んでください」
菊乃は、小さなパラフィン紙の十ずつにまとめたものを二つ、布の袋に入れておかみさんに手渡す。
「どうもありがとう。病院でもらった錠剤より、身体に優しいって、おじいちゃんがきかないのよ。お手間でしょう?ごめんなさいね。」
「そのぶん、お代を頂いているのだから、気になさらないでください。どうぞ、お大事に。たぶん、その薬が無くなるころには良くなるはずだから、もう少しの辛抱ですって、お伝えください」

菊乃の仕事は、まじない屋だ。
まだ、この集落にも隣の集落にも車が無かったころ、山を降りて医者にかかるのは高齢者には現実的ではなかった。
菊乃の祖先は病人を前に脈をとり、顔色を視て、祈祷をして生計を立てていた。
まじないの補助として、植物や動物、ヘビや虫、それに特別な鉱物の力を借りて薬を作り、病人に与えた。
平成の世になり、車で市内の病院まで三十分もあれば行けるようになったが、まだ依頼人は途絶えない。
父親は、祖父に背を向け、大阪に出てサラリーマンになった。同じ村の出の母は都会を嫌がり、娘の菊乃とともにこの土地に留まった。

祖父は、菊乃が十歳になった日から、まじないのやり方を教えた。
菊乃は時勢に合うように、鍼灸師の資格をとり、そして、高校を卒業すると祖父の隣で手伝いを始めた。
まじないが本分だが、それは滅多に客には見せない。問診をしながら、または、鍼などの治療や薬に混ぜて使う。それが菊乃のやり方だ。

二年前。祖父から代替わりをしてから、若い夫婦や新しく村に住みついた都会人にも薬の評判が伝わり、仕事は増えている。
小さな民間療法の店で、この地にいつまで暮らせるものかと思案していたが、今のところ、何とか食べていけている。


不思議な噂を聞いたのは、半年前の夏だ。
山に化け物が出るようになったと言う。言い出したのは鹿を追って山に入った猟師だった。人の居るはずの無い猟場で女の笑い声が近づいてくる、と、男は怯えた。初めは信じるものもいなかったが、ベテランの猟師が何人も同じ経験をし、ついに一匹の猟犬が山で行方知れずになると、狭い村の中では妙な噂が飛び交うようになったらしい。らしい、というのは、誰も菊乃にその話を教えてくれなかったからである。


左足をやられて動けない、と電話をかけてきたのは、従兄である。姉の兄である亨介は、十九も年が離れている上に面倒見が良く、菊乃は父親のように甘えて育った。林業を営む亨介は、山を愛し、里を愛した。イノシシやツキノワグマが増え、畑を荒らすようになると、銃を持って山に入った。猟友会では若手であったが、一番の腕利きと言われていた。
その亨介が、山でしくじりをしたと言う。獲物を仕留め損ね、さらに川沿いの岩から足を踏み外して転落したそうだ。
「町の医者に行っても様子がわからなくてよ、日赤(市内で一番大きな病院)に紹介状持って行ったよ。レントゲンも撮ったが骨も折れてないし、捻挫すらもしていない。位置も全て、異常無し。痛みはあるが、歩くこともできる。医者も困って、適当な痛み止めを渡されたが、飲んだところであまり効いているふうでもない」
いつも快活であった亨介らしくもなく、何か奥歯にものが挟まったかのような言い方をする。そもそも、どうして直に診せないのか。電話で治療などできるはずもない。足は痛むが異常は無く、車も運転しているそうだ。それなら、何故、診療所に来ないのだろう。菊乃は、何か隠し事があるのだろうと察していた。
「わかった。仕事が終わったら、お兄ちゃんのとこ、寄るから。夕方になるけど、いい?」

往診の予定を全て終えると、もう18時を過ぎていた。それでも、まだ陽は高く、赤い。首筋に流れる汗を拭い、亨介の家を訪れると、どうも人気が感じられない。いつもは開けっぱなしの木戸が閉められている。呼びかけにも反応が無い。
足が痛い、動けない、といっていたくせに。菊乃は文句を言いながら戸を持ちあげると、鍵は掛けられていないようで、するりと開いた。土間に入り、もう一度「お兄ちゃん」と呼びかけるものの、やはり空気はしんとしている。無人の家は、なぜこうもひんやりとしているのだろう。身体をぶるりと震わせ、下駄を脱ぎ、家に上がり込む。子供の頃から見知っている家だ。囲炉裏に目を向けると、炭が尽きかけている。完全に火を消してしまうと面倒なので、乾燥させた炭を上からいくつか足す。たぶん、治療には湯が必要になるだろう。鉄瓶に水を汲み入れ、鉤にかけた。

「おお、悪いな、わざわざ」
奥の間から声がした。足を引きずりながら、ゆっくりと亨介は囲炉裏端にある籐椅子まで歩き、腰を下ろした。
「沢に落ちたんだって?猿も木から落ちる、だわねえ」
軽口をききながら、作務衣を捲って、痛むという足首を診る。
医者の言う通り、見た目には変わったところは無い。腫れてもいない。しかし、重心を左にかけられないほどの強い痛みがあるという。
太谿のツボのあたりは、軽く触れても顔をしかめるほどであった。
菊乃には、どうも足以外のところに原因があるように思えてならなかった。
一寸悩み、草を擦って作った試薬を患部に塗り、清潔な布で覆って包帯で巻く。
明朝には、答えが見つかるはずだ。
打撲であれば、痛みはかなり、改善される。
しかし、もし彼が口を濁していることが、人ならぬものと関わりのあることなら、試薬は皮膚を紅色に染めることになるだろう。

「何、どうしたの、これ」
朝まで待つ間もなく、包帯を巻いた途端、どす黒い血のような液体が浸み出してきた。
何をしたのか、何があったのか。余程、山の神の不興を買うことが無ければ、ここまで酷い色にはならぬ。
行方不明になった犬を思い出し、菊乃は、その背中に冷たい汗が伝うのをじっと感じていた。

「この数か月の山の様子は聞いているだろう」
菊乃は、慌てて包帯を解く。頭の上から降ってくるように従兄の低い声が響いた。
「悪さをしてるのは、山の神じゃない。あれは、まやかしだ。男の精と血を好物にして暮らすバケモンだと」
「ヤツに会うと、犬を獲られるだけじゃねえ。タマシイまで持っていかれるんだよ。宮坂の三男は、襲われてからもうひと月も外に出ようとしない。まるで二十も老けたようだ」
「バケモンは、昔から巫女の身体に入り込んで悪さをするらしい。戦前に騒ぎが起きてから、うちの神社は女人禁制にしてる。それからは平和だったんだ」
「正月からの騒ぎは、お前も知っているだろう」

従兄は突然立ち上がり、そして私は強い力で蹴飛ばされ、次の瞬間には床に転がっていた。
「お兄ちゃん、何を・・?!」
「おい、よくも宮坂をやってくれたな」
力任せに髪を引かれ、殴られる。
「ヤスがな、バケモノの顔を見てたんだよ。お菊さんにそっくりだったと」
「この村でお前と同じ年頃、背格好の女は他にいねえし、間違えようが無い」
鬼のような形相の男に殴られ、蹴られ、菊乃は息をするのもやっとで、声を出すこともできなかった。
「おい、バケモノ。何時からだ。いつから、菊乃の身体に入ってやがる」
従兄の手が、首にかかる。
「俺の大事な菊乃の身体から、出て行ってくれ」
「違う・・私じゃない!」
言いかけては張り倒され、口の中に鉄の味が広がった。
菊乃の身体が、恐怖と絶望で満たされていく。
何一つ抵抗もできないまま、荒縄で後ろ手に縛られ、転がされていた。
「中に入ってるのは、狐かな。狸かな。煙で燻せば一晩で出て行くらしいが・・」
「おい、狐。お前、正体を知られた男を殺めることはできず、犯された男には、そのしくじりの代償として生涯、眷属として仕えるって聞くが、どうだい」
「本当は殺してやりたいところだが、そうもいかねえからな」
「狐に乗っ取られた従妹を助けるためなら、菊乃の身体を弄ぶのも仕方ねえだろう。おい、覚悟しろよ、狐」
亨介は手早く、菊乃の口を手ぬぐいで塞ぎ、着物の裾を広げた。
http://lamia-nezumiko.tumblr.com/post/177288877453

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官能小説ナイト

来る9月29日(土) 新宿歌舞伎町にあるバー”Titty Twister”にて、官能小説ナイトイベントを開催します!
今回は、水先案内人として、ねずみこが店内をウロチョロしますよー。

官能小説。読むも良し。聞くも良し。
文字を目で追うのとは違う、耳からの官能をお楽しみください。
読むのは、一人でもいいし、朗読劇みたいに遊ぶのも、すごく楽しい。
マスターの音縄さんに伺ったところ、Titty Twisterには官能小説を書くお客様も多いとか。
フェティッシュって、脳内の妄想が一番だったりします。
ぜひ、一部なりともご紹介いただけたら嬉しいです。
他の人のフェティッシュを覗いてみたい。それが私の欲望でもあります。
何といっても、初めての試みです。実験しながら遊びましょう。

といっても、ご心配なく。
何と、つばささんが小説を読んでくれるらしい!うわあお。
ぜひ、聴きにいらしてください。

ちなみに、わたくしは、全身タイツとか対物性愛、レズビアン、BDSMなんかの入り混じった小説をちょびっとご紹介する予定です。
欲望全開です。

イベントですが、通常と同じ料金でお楽しみいただけます。
そして、イベントですが、通常と同じように、SMしたり緊縛したりも、通常通りお楽しみいただけます。
いつものティッティーファンの皆様も、ご安心してお越しくださいね。

ティッティーイベントページはこちら↓
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東京都新宿区歌舞伎町2丁目10-6 ピア新宿4階
TEL:03-6278-9090
【営業時間】 火~木 20:00~25:00頃 金・土 20:00~明け方まで
【定休日】 日曜日・月曜日 (※日曜日は隔週不定期オープン)

お問い合わせは、直接Titty Twisteまで。
または、ねずみこのTwitterアカウント、こちらのブログのコメント欄でも承ります。

遊びに来てねー

テーマ:18禁・官能小説 - ジャンル:アダルト

アイシャドウ 1

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「これを、着ていただきたいのです」
男が差し出す渡された風呂敷包みからは、樟脳のきつい匂いがしていた。

「拝見いたします」
風呂敷を畳の上で広げると、紺色の浴衣と半幅の博多帯が入っていた。美しい柄が目を引いたが、長い間、誰も袖を通していなかったのだろう。腰の部分の裏側が薄く変色していた。
「きれいなお着物ですね。大切に、お借りいたします」
そう答えると、男はほっとしたのだろうか。詰めていた息をふっと吐き出して、微笑んだ。
「ありがとう」

もう一度風呂敷に包みなおそうとして、指の先にかたいものが触れた。
浴衣の隙間に紛れてしまったのだろうか。取り出すと、それは、化粧品らしき小さなパレットであった。
「ああ、これは」
男に差し出すと、それを指に乗せ、数秒、じっと見ていた。
「これは・・ああ、そうです。彼女はめったに化粧をしない人でした。似あわないし、恥ずかしいからと。化粧なぞしなくても美しい女でしたが、私は彼女を別人にしたくて、このアイシャドウを贈ったのです。赤い口紅と一緒に」
男は何を思い浮かべていたのか。ゆっくりと言葉を区切って、一言ずつ話した。
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アイシャドウ 結

前編 アイシャドウ 1
http://happymoon.blog35.fc2.com/blog-entry-831.html
中編 アイシャドウ 2
http://happymoon.blog35.fc2.com/blog-entry-832.html

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タンブラー1011
縄を解く時には、男は汗にまみれていた。
大輔さん、と、私が呼びかけると、男はしばらく黙ったままだった。

「大ちゃんと呼んでくれないか」と、囁くように言ったのは、もう、後手の縄が残るのみであった。
背中に男の熱を感じながら、私は言った。
「大ちゃん」

「瑞江」
男は唸るように叫び、私は強い腕に抱かれた。
私は、彼の腕を手のひらでそっと包んだ。一つの塊になるかのように、肌を合わせる。男の熱が私に伝わり、私もまた、肌がじっとりと湿ってくる。薄い浴衣が二人の液体を一つに混ぜ合わせていく。
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男がゆっくりと離れると、私は自分の役目が終わったことを知る。
「ありがとう。君のおかげで、瑞江との時間を取り戻すことができた」

「こちらこそ。忘れがたい貴重な体験をさせていただきました。ありがとうございます」
ふと、思いつきを口にした。
「瑞江さん、初恋の方だったのでしょう?」

「お見通しだな。よく解ったね」
「いえ。幼馴染だったんですか?」
安心して、そんな馬鹿な質問をしてしまった。

「妹だ。最愛のね」

豪華夕食付の温泉宿をキャンセルして、東京行きの新幹線に飛び乗ったのは言うまでも無い。
口は災いのもとだ。私が余計なことを問わなければ良かったのだ。
男の言葉が真実か虚言かはわからない。ただ、せっかくの休日に粘り気のある兄弟愛を持ち込みたくはなかっただけだ。


ランキングに参加しております。よろしかったらひと押しなりとしてくださいまし。

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プロフィール

鼠子

Author:鼠子
音楽と東京を謳歌する変な人。ルーツはSMだけどゼンタイ、W&Mなど、皮膚感覚とアングラを愛してます。趣味は18禁なドキュメンタリーを撮影すること。blogでは過去と現在、現実と非現実、日常と非日常のコラージュをお届け中。のんびりふらふら放浪してます。ブログのご感想など、メールでもお待ちしております。こちらからお願いします。
ツイッター @nezuminoko

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