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男に嬲られる仕事をしている女の話

日本のどこか海の傍の町に佇む妓楼。何十年も前の昔話だ。

古い二階建ての日本家屋。板張りの廊下は、静かに歩いても磨かれた床が軋む。
待つ身にとっては、ありがたい。数秒であっても、心を整えることができるからだ。

ぎし、ぎし、と足音が聞こえる。来る、と思う。障子がすっと開く。
豊乃は、部屋の隅に正座をし、背筋を伸ばしている。
今夜の客もまた、昨今めずらしい和装であった。
恰幅のよい、坊主頭の壮年の男性である。背は高く、腕も足も太い。
大きな男だ、そう思いながら、手を前につき、深々と頭を下げる。
男は障子を閉め、そのまま、豊乃に近づいてくる。
鼠色の足袋が、手をついた指先の一寸先に見えた。洒落た男だ。
「女」
低く、静かではあるが、響く声であった。
「はい」
「面を上げたかったら、直って良いぞ」
ふっと、声が漏れそうになった。可笑しいことを言う。正座をし、三つ指を付いての礼に、最近の客は、むしろうろたえ、顔を上げさせるものだが。
「いえ。貴方様の望むようにあるものですから」

「ふうん」
男の気配が急に近くなる。身をかがめたのか。
急に、髪を鷲掴みにされ、強制的に顔を上げられる。
いきなりこれか。
痛みに耐え、目の前の男を見据えた。
「それは、俺の要求を叶えるという意味か。女将に俺への文句が散々伝わっているようだ。出入り禁止になってもつまらん。嫌なら嫌と言え」
「木口様。お心遣い、痛み入ります」
そう答えるや否や、男はさらに私の髪を強く後ろに引いた。そして、右手の親指で、私の頬を撫でまわした。しばらく撫でると、親指の付け根のあたりや、手のひらの真ん中あたりを使って、丹念に頬を撫でる。
豊乃は男の分厚い唇を眺めていた。ふと目が合う。しかし、二人とも何も喋らない。私は次第に焦れてきた。

妓楼の女将から、男は強い加虐嗜好があると聞いていた。「うちの子たちみんな、二度目は厭がって。強くぶたれるものだから、痣がついちゃうんだって。お豊ちゃん、あんたはそういう客をあしらうのは上手いだろう。頼まれてくれないかね。もちろん、お礼は弾むよ。うちの子の二倍の値段で、お願いできないかえ」
女将はこうやって、時に困った(しかし金払いの良い上客)を私に回してくる。女を撲りたい客も、逆に女から打たれたい客も、極端な嗜好の客は店の娘たちではうまく対応できない。私は彼女達のように若くもないが、しかし、そういった個性の強い客には好まれた。身受けされ、足を洗ったものの、たった数年で夫に先立たれて後家でいるのを知っている女将は、こうやって数か月に一度、声をかけてくるのだった。

男は懐から縄を出し、私を正座させたまま、腕を後ろに回して縛りあげた。
「何も縛らずとも、私は何処へも逃げはしませんのに」そう告げると、男は口の端を歪め笑った。
「頼もしい女じゃ。それでは、次からはそうしよう」
そして、また頬を撫で始めるのだった。男の太い指は、時おり首のあたりへ這う。上から下へ、また下から上へと動く。
「逃げないと言ったな、女」
ふと、手が顔から離れた。しかし、次の瞬間、私の右頬は激しく打たれ、目の奥で火花が散った。訳が分からなくなり、身体は折れて畳に伏せっていた。
痛みを感じたのはようやくそれからで、頬が火を当てられたように熱く痛みを訴えていた。
男はふたたび私の髪を引き、掴むと無理やりに身体を起こして正座させた。
「これでも逃げないか」
打たれる、そう身構えたが、男の手は相変わらず、頬を執拗に撫でまわすのだ。男の手が離れ、また打たれる、と身体を固くすると、男は豊乃の襟元から素早く乳首を掴み、嫌というほど捻り上げた。
かろうじて悲鳴を飲み込み、男を見上げる。
「ほう、声も上げぬか」
確かにこれでは、女の子たちも嫌がるだろう。さっさと犯せばいいものを、こんな甚振りを続けられては、泣いて部屋から逃げ出す娘がいるというのも頷ける。
「良い鳴き声もお聞かせできずに申し訳ありませぬ」
「木口さまのお気に召すようにされたらよろしいのですわ」
男の嗜好がどれほどのものか、知りたいと思ったのが、つい口に出てしまった。
男は口元に笑みを浮かべた。「女、楽しませてくれよ。泣き喚く女はもう飽きた」
そして、言葉どおり、子の刻が過ぎるまで、豊乃を打ちつづけた。
髪を引き倒して背中や尻をあらわにすると、犯すことも無く、ただ柔らかい太ももを狙って撲つのだった。
男の手は厚く、丈夫であった。道具を使わず、長い時間女を痛めつけ続けた。太ももや尻が腫れあがり、赤から青黒く変化していくのを、豊乃は感心しながら眺めていた。いつの間にか涙が流れて頬を伝っていたが、しかし、後ろ手に縛られているので顔を拭うことも出来ない。ただ、声を出してはこの客を満足させられまいと感じて、唇を固く噛みしめていたのだった。

いっそ、気を失うことが出来れば良かったと思う。
男はすっと動きを止め、豊乃の股に手を差し入れた。
豊乃は、驚いた。豊乃の秘部は、湖のように温かな水をたっぷりと溜め、そして溢れていた。
「つまらぬ女じゃのう」
男の声に、豊乃もまた自分自身がくだらない、取るに足らない女であることを悟り、今度は打たれてもいないのに頬がかっと上気するのを感じた。
「落ちてしまえば良いものを。強情な女よ」
男はそれ以上指を差し入れることも無く、最後まで犯すこともせずに立ち上がり、ぷいと部屋を出て行ってしまった。

女は一人、文字通り、置いてけぼりにされてしまったようであった。心もとなく、身を小さく縮めて呻いた。
ほっとしたのではない。ここまで体を張って、それでも客を満足させられなかった自分の不甲斐なさを感じて、居たたまれなくなったのだ。
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テーマ:SM・拷問・調教・凌辱  - ジャンル:アダルト

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妄想感想文

和装の海坊主・・・何事にも強い生命力で人生を切り開いてきた・・・多くの物を手に入れても尚、己の加虐性の落ち着き所を探して彷徨しているように感じます。
自ら手を振り下ろし泣き喚く女の姿を初めは興奮して鑑賞していたのではないでしょうか?
痣になるまで打ち据えられて じっと耐える女を求めるに至った経緯はスピンオフ作品になりそう・・・
 耐えながらも性的興奮の印を露わにする女には幻滅するようになった・・・という点も何かが埋まっている気がします
「落ちてしまえば良いものを・・・」 の一言が謎を深めます・・・妄想しつつ考えてみます。
海沿いの妓楼で豊乃と過ごした時間は海坊主の心理にも影響を与えたはのではないかと・・・ 
海坊主は再び豊乃の前に 戻ってくるのではないかと感じています

Re: 妄想感想文

わー、わー!
なんと、ジェノさんから感想文を頂けるなんて、恥ずかしくて何年も埋もれていたテキストを世に出して良かったです(笑)
経験不足すぎる書き手ですが、あのセリフだけはリアルなんですよー。
あまり顔色を変えたくないモデルなので、詰まんなかったんじゃないでしょうか・・。
ジェノさんにも言わせてみたいですねえ。
今度、ぜひ撮らせてください。あんこ見せてー!

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Re: 遠吠え

鍵コメントさま

そうだったんですね。お悔み申し上げます。
家族でないからこそ、お別れも言えないこともあるだろうし、本当に胸が痛いです。

私も、SMをモチーフにした小説から、多くの妄想の素をもらいました。
それがなかったら、無味乾燥な毎日を過ごさなくてはなりません。

私の文章はあまりにも自家発電的で、究極の自己満足なのですが、鍵コメントさまに拾っていただいて、こんなにありがたいことはありません。

恋とも愛とも似て非なるSMの性愛というものに惹かれ続けております。ありがとうございます。

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Re: 砂漠の流れ者

鍵コメントさま
砂漠のオアシス、本当にその通りですね。
リアルでどこまで近くまで体験できるか、きっと追い続けるんだろうなあと思います。
プロフィール

鼠子

Author:鼠子
音楽と東京を謳歌する変な人。ルーツはSMだけどゼンタイ、W&Mなど、皮膚感覚とアングラを愛してます。趣味は18禁なドキュメンタリーを撮影すること。blogでは過去と現在、現実と非現実、日常と非日常のコラージュをお届け中。のんびりふらふら放浪してます。
ツイッター @nezuminoko

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