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用務員室3

用務員室
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用務員室 2
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用務員室に使われていた部屋。
たった一つ置かれている石油ストーブのオレンジ色の炎が弱々しく光る。
部屋の気温はグングン下がる。
ねずみは相変わらず天井を駆け回っている。
部屋の外は激しく吹雪いている。
何時の間にか寝ていた男が目をさますと女が消えていた。
部屋から消えた女の所在を確かめに、男は防寒着を羽織り引き戸を開けて外にでる。
外は一寸先も見えない吹雪。
降り積もった雪の上にさらに雪が積もる。
木の枝は重い雪を背負いながらしずり雪となってしな垂れている。
根雪が氷の冷たい岩となって硬く鈍く光る。
男は風雪に煽られて立ち止まる。
目にも鼻にも口にも雪が飛び込んで来る。
口を覆って大きく息を吸い込もうとするが息が出来ない。
風が雪を煽りたて、のたうちまわって叫ぶ。
目も開けられない。

瞬間、風が弱まった。
ふと男が眼をこらすと、そこには白い着物を着て緑の帯を締めた女がいた。
IMG_1454.jpg
縛られ木に括られている。
透明感の無い世界。
雪が放つ冷たい光が女の姿を墨絵のように浮かび上がらせる。
女の髪が雪に犯され、なびく。
「あの女だ!」
再び強い風が雪を運んで吹き抜ける。
その瞬間、羽毛の様な雪が男を包む。
男は雪の中で呼吸することが困難になり卒倒した。
おぼろげに見上げる男に女が語りかける。

「死にたくても死ねない私。
生きたくても生き得ない彼の願いを叶えるためにあの時、私は彼に縛られ吊られました。
彼の満足げな表情を見て私は安心したのです。
彼は安堵の色を顔いっぱいに見せて往きました。
私の役目はその時に終わったのです。
私はこうやって死にゆく人を見守って生きてきました。
死にたくても死ねないまま。幾百年の歳月を生きてきたのです」
女が語る。
吹雪の中で女が見え隠れする。
幾百年、生き続けて死にゆく人の安寧を祈って来た女。
その女、八百比丘尼。伝説の女。
女は漁師の父親が獲った人魚の肉をそれと知らずに食べてしまったことで「不死」という逃れられない運命に囚われる。
長い年月を経ても老いず、死にゆく人を見送り続けた。
女は死をひたすら追い求め、諸国を行脚する。
いつしか比丘尼となって、死に行く定めの人々に安らかな引導を渡すようになる。
死を恐れ逃れようとする人々。自ら求めても得られない死。
幾百年、無数の死を看取った比丘尼の優しさの中で、死に行く人々は自分の永遠の生を比丘尼に託し安らかに死出の旅へと向かう。そして比丘尼もまた死を求め旅にでる。

「私は数限りなく看取って来ました。
死にたいと思いながら。
死ぬためにその時代、その時代を生きて来たのです。
放浪し、定めのないまま生きて。
あなたに会った時は苦界に身を沈めて居た時。死にたいと思って。
あの時、あなたの彼を想う気持ちが眩しくて私はあなたの前から去りました。
それにあなたには私は必要ではなかったから。
私を探し続けたあなた。
あれから半世紀。
あなたの今を私は知っています。
病に侵されまもなく死に臨むあなた。それでも私を求めて雪の中を訪れてくれたあなた。私が必要なあなたに寄り添います」

雪が女の情念のように渦を巻いて舞う。
白い布を流したような雪が後から後から降り続き、あたり一面を新雪で埋め尽くす。
雪の中で凍りついた男の身が温かく溶ける。
雪の中を歩くのが好き。雪の中は温かいと言った女の傍らで男は静かに目を閉じる。
雪が絹のような肌触りだと男は感じる。淡く暖かい。
雪がさらに激しく吹雪く。
男は雪の原につっぷす。
次の雪を待ち、消える事なく降り続ける雪、友待ち雪がたちまち男を覆う。
雪が繭の中いるかいこの様に男を包む。
雪に埋もれた男の顔は微笑んでいた。
IMG_1519.jpg

1479.jpg

IMG_1564.jpg
Text and Photographs by jun@rokumeikansalon.



動画の写真は写真おきば(フリッカー)に置いてあります。ゆっくり観たい方はこちら。
https://www.flickr.com/photos/130884926@N02/

テーマ:SM・拷問・調教・凌辱  - ジャンル:アダルト

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iroke

雪の上の白い着物、帯、帯留めのコントラストに
なまめかしさを感じちゃいます。

Re: iroke

オリオンさん
嬉しいお言葉をありがとうございます!
襦袢の上に帯というむちゃくちゃな着方をしてしまいました。おはずかしい!

雪女殺し

ねずみこさん、(作家様、緊縛カメラマン様)

こんにちは。
とても凛として、でも温かいお話に、
艶かしい雪女画像
状況小説、堪能させて頂きました。

濡れた切ない目が良いですね。

八百比丘尼には縁があります。
子供の頃に伝説の残る地を訪れて恐怖しました。

彼は、死に至る至福の快楽ですね。
本望だったのかな、と想像します。

比丘尼は、
どうやって亡くなったのだろう。

私が彼なら
比丘尼と刺し違えたかっただろうに。

焼き斬る刃が欲しかっただろうな、
と想いました。

また、
官能的な状況小説
拝見したいものです。

ありがとうございました。


管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

Re: 雪女殺し

柊さん
あたたかいコメント、ありがとうございます。
八百比丘尼は、つい最近、その伝説を知りました。
ただひたすらに寒かった撮影ですが、文章がつくと別の世界、別の人物になることができて非常に面白い経験でした。
比丘尼と刺し違える、と。
熱い魂をお持ちの方とお見受けしました。普段は冷静な感じですよね~!

Re: 目は口ほどに

鍵コメントさま
そうなんですー!お天気は厄い、禍いだったのか、それとも幸運だったのか。春近く、雪も溶けようかという陽気だった2から一転、一晩あけたら横殴りの雪でした。演技が下手な私には良かったのかもしれません…しみじみ。
プロフィール

鼠子

Author:鼠子
音楽と東京を謳歌する変な人。ルーツはSMだけどゼンタイ、W&Mなど、皮膚感覚とアングラを愛してます。趣味は18禁なドキュメンタリーを撮影すること。blogでは過去と現在、現実と非現実、日常と非日常のコラージュをお届け中。のんびりふらふら放浪してます。ブログのご感想など、メールでもお待ちしております。こちらからお願いします。
ツイッター @nezuminoko
フリッカー(写真おきば)
http://www.flickr.com/photos/nezumiko/
タンブラー 日常
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